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【読書感想】島本理生『週末は彼女たちのもの』恋の終わりも始まりも、キラキラと切なさの詰め合わせ

島本理生さんの恋愛小説が好きだ。中でも大好きなのは、名刺代わりの小説にも挙げている『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』。いろいろとシリアスな場面もあるのだけれど、私がこの小説で一番好きなのは「おいしいものを好きなひとと食べる幸せ」を描いているところだ。

 

 

本でもドラマでも「食」のシーンを大切にしている作品が好き。『アンナチュラル』のミコト(石原さとみさん)のせりふ「絶望してる暇あったら、うまいもん食べて寝るかな」という言葉は強く強く胸に残っている。

 

ここまで書いてその本の話しないんだ?という感じだが、今日は島本さんのショートショート(と言ってもいいはず)『週末は彼女たちのもの』を紹介する。

『週末は彼女たちのもの』/島本理生 あらすじ

 

 

婚約者に結婚の延期を告げられた女、新しい恋を失ったシングルマザー、彼氏の代役をさせられた大学生、永遠を信じない実業家。そんな男女に突然訪れる新しい恋の予感。信号待ちの横断歩道、偶然立ち寄ったバーのカウンター……。いつでも、どこでも恋は生まれる。臆病なあなたに贈る、人を好きになることのときめきと切なさに溢れた恋愛小説。(幻冬舎HPより引用)

ショートストーリーが何篇も組み合わさっている1冊で、別物のお話かと思いきやすべてがつながっている物語(大好物)。もともとはLUMINEの広告として連載していたもの。このことは読み終わってからのあとがきで知ったけど、なるほどと納得した。キラキラしていて、だけど少し切なさをまとったお話の数々。広告の写真と一緒に添えてあることを想像したら、それだけで軽やかな気持ちになる。

とても薄い本なので、さくさく読めるし(1時間以内には読めると思います)、なんなら元気がないときにも読める。個人的には春にカフェで読みたいけど、眠れないベッドの中、疲れた帰り道の電車の中、失恋して何も考えたくないとき、なんとなく仕事がうまくいかなったとき。友達との待ち合わせまでに時間があるとき。そんな、ちょっとした時間に読みたい本だ。装丁がおしゃれなところもポイント。インテリアみたいに置いておいてもかわいい。

リアルとアンリアルが混ざっている登場人物たち

どの登場人物も、リアルとアンリアルが混ざっているような魅力がある。「こういうことあるよね」から始まり「こんな素敵な人いないよ」という部分が、どの登場人物にも存在する。でもその“リアル”と“アンリアル”。実は私たちも持ち合わせているのかもしれない。

隣の芝生は青く見えるとはよく言ったもので、「羨ましい」という感情は少々厄介だ。友人が持っている素敵なバッグ、仕事で新しい案件を手にしてキラキラして見える同僚、時には家族にだって「羨ましい」という感情はつきまとう。

私は、本作のように、視点が変わる小説が好きだ。それは、自分が思っていることと、他人が思っていることは違うと思える瞬間が多いから。自分にとっては他人が羨ましくても、他人のとっての「羨ましい」の対象は自分である可能性もある。誰もが「人生」を生きていて、良いこともあれば悪いこともある。そんな当たり前のことは、たくさんの登場人物の人生が教えてくれる。

女友達のシンプルな友情

主軸は婚約者に結婚の延期を告げられたミナと、新しい恋を失ったシングルマザーの奈緒ふたりの女性。この二人の友情を見ていたら、長年の親友に連絡をしたくなった。毎日連絡を取るわけではない、すべてをさらけだすわけでもない、でもたまに連絡したくなる、そんな親友。

LINEのトーク画面を開くと、「家に帰ってきていつも、これも話したかったんだーって思い出す。別に大した話じゃないんだけどさ」というLINEで止まっていた。なんでこれに返事してないんだよ、と自分でツッコみながらも、また脈絡のない「元気?」を突然送る。そんな友達はこの親友ただ一人で、ずっと側にいてくれることにまた改めてありがとうと思う。

島本さんの物語は、キラキラしているんだけど、どこかにしっとりとしたものや、切なさなど、“水”のような質感を感じることがある。『ナラタージュ』や『Red』『ファーストラヴ』など、読むのにエネルギーが必要な作品も多くあるけど、私は島本さんの描く物語が好きだ。誰でも、明るい部分と暗い部分がある。光があれば影もある。そんな当たり前のことを、私は島本さんの描く世界から改めて学ぶ。忘れた頃に、また学ぶ。