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【実写化】遠藤かたる『推しの殺人』感想|私たちが知っているのは推しのほんの一部分

推しシリーズの読書が続いている。『推しの殺人』は、正直タイトルと想像した内容に相違があったのだけれど、読んでいて「推しのことで知ってることなんてたったの一部分だな」と改めて思った。いや、当たり前なんだけど。

 

 

遠藤かたる『推しの殺人』あらすじ

大阪で活動する三人組女性地下アイドル「ベイビー★スターライト」は、様々な問題を抱えて危機的な状況にあった。尊大な事務所社長、グループ内での人気格差、恋人から暴力を受けているセンター……そのような中で、“ベビスタ”はさらに大きな問題に見舞われる。メンバーのひとりが事務所で人を殺してしまったのだ。彼女の罪を隠蔽するため、三人は死体を山中に埋めることを決意して――。(Amazonより引用)

 

主人公たちは三人組女性地下アイドル「ベイビー★スターライト」通称ベビスタ。いつもどこか冷静なルイ、元センターのテルマ・センターのイズミ。センターだったテルマはイズミが加入したことによってセンターを奪われ、テルマとイズミの仲は険悪だ。ただ、グループの売上はイズミの人気で持っているような状態。ルイとテルマは社長からお荷物扱いされていて、お世辞にもうまくいっているグループとは言えない。ルイはもうアイドル辞めようかな、と思っている状態だ。

 

しかしそんな中で悲劇が起こる。メンバーのひとりが人を殺してしまった。今まで仲が良いとは言えなかった三人は、この事件をきっかけに団結。「アイドルでてっぺん獲る」と掲げて、事件の隠蔽を考える。事件をきっかけに団結し、団結力があるからパフォーマンス力も上がり、ファンも獲得。三人は人気を得始める。という、なんとも皮肉な展開。

 

読書初心者やミステリー初心者にもおすすめ

 

「推しの殺人」というタイトルからして、ファンが主人公かな?とも思ったんだけども、ファンは冒頭と終盤にしか出てこない。でもこのファンの存在がまた、なんというか切ない。本作はアイドルが主人公なので、アイドルがてっぺんを獲るため、やっと団結した三人がずっとアイドルを続けるためにはどうしたらいいかが描かれる。

 

切実な思いや三人の深まっていく絆は、そのままパフォーマンスに表れた。三人のしたことがいつバレるかとヒヤヒヤするところなど、ミステリー要素はもちろんあるが、非常に読みやすい。読書初心者や、ミステリーはあまりチャレンジしたことがない…という人におすすめしたい。もともとミステリー小説が好きな人はもしかしたら少し物足りないかも。

 

ファンが知ってることなんて一部分でしかない

 

ときどき、推しに「え、今日のパフォーマンスめっちゃよくないか!?」と思ったり「今日の表情なんかいい!」と思ったり、「グループの雰囲気、最近またよくなったよね」と思ったりすることがある。思っていてSNSを覗くと、同じような感想を持っている人が表れて、よりその感想を確かなものにする。

 

でも、そんなときに推しに何があったかなんて私たちにはわからない。私たちは何かを感じることしかできないし、オフィシャルに出している言葉を信じるしかない。グループの解体、解散、再編成、メンバーの脱退。それはだいたいが事後報告だ。こっちがいくら「ちょっと待ってよ」と言ったって多くは変わることがない。もう決定事項だから。そして彼・彼女らは、形を変えたり、思い出になったりする。諸行無常だ、本当に。

 

私たちはいつだって想像するしかない。「よく考えてみれば、あれ変だったもんね」「あのとき泣いてたのはそういうことだったのか」と考えて、「あのときにはもう決まってたのかな…」なんて、想像するしかない。それってやっぱり、すごく切なくて、やるせない。『推しの殺人』でたった少しの登場のファンの、特に最後の行動を見ると、やるせなくてたまらなくなる。

 

「推しは推せるときに推せ」という言葉が嫌いだ。だってこっちはいつだって、推したいときにそのときにできる最大限に推している。いろいろなスタンスはあるにしても、誰だって推したくて推しているのだ。変わってしまうのは周りの環境や、会社や、君たちじゃないか。でもきっと、推したいときに推しているなんて、ファンだって相当勝手なのだ。私たちが知っている部分なんて、ほんの上澄みでしかない。でもだからこそ、アイドルとファンという関係は成り立っているし、くやしい気持ちもあるけどそれでいいのかもしれない。

 

問題を抱えて団結力が高まっていく三人の模様は、ほほ笑ましくもあり、若干の恐ろしさもある。秘密を共有することで、人はこんなにも近づくことができるのか。ちなみに、もともとのタイトルは『溺れる星くず』らしい。読み終わると、そっちのタイトルの方が好みだなと思いつつも、『推しの殺人』のタイトルも上手だなと思う。実際に『推し』とタイトルに入っているだけで興味をそそられてしまったのだから。

 

実写化決定!田辺桃子&横田真悠&林芽亜里がトリプル主演

本作の実写化が決定した。ベビスタのメンバーを演じるのは、田辺桃子(ルイ)&横田真悠(テルマ)&林芽亜里(イズミ)。ドラマ版ではオリジナル要素も加えて全13話というスケールだ。

 

さらに、マーケティング会社の社長・河都潤也を城田優、心優しき弁護士の矢崎恭介を現役アイドルの増田貴久が演じる。個人的にはアイドルの増田さんがこの作品に関わることがとても楽しみだ。

 

実写化となるとかなりスピーディーでスリリングな展開が期待される。話題となった原作の実写化は、作り手にも見る側にもプレッシャーがかかる。個人的にはかなり実写化に向いている作品だと思っていて、ドラマは映像と音という要素が加わることによって、ベビスタの三人が秘密を隠す様子などがさらにスリリングに描かれるのではないかと期待している。

 

木曜ドラマ『推しの殺人』|読売テレビ