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【読書感想】柚木麻子『早稲女、女、男』 あのときの自分を思いっきり抱きしめてあげたい

大学時代を思い出すと、あまりにも痛い自我も一緒に思い出してしまって、顔がカーっと熱くなる。あのときの私は、なんであんなにも頑なで融通がきかなくて、『自分だけは違う』と思い込んでいたんだろう。『早稲女、女、男』はそのときに自分を思い出すには十分すぎる小説で、過去の自分を顧みて何度も恥ずかしくてたまらなくなった。

 

柚木麻子『早稲女、女、男』あらすじ

 

 

面倒臭くて痛々しいけど、憎めない

ワセジョと5人の女子の等身大の物語

男勝りでプライドが高くて酒豪。だけど本当は誰よりも純粋で不器用。そんな早稲女の中の早稲女、早乙女香夏子は就職活動を終えたばかりの早稲田大学教育学部の四年生。

演劇サークルの幹事長で七年生の長津田との腐れ縁はなんだかんだでもう4年目だが、このところ口げんかが絶えない。そんなとき、香夏子は内定先の先輩・吉沢から告白される。

女の子扱いされることに慣れていない香夏子は吉沢の丁重な態度に戸惑ってしまう。過剰な自意識ゆえに素直に甘えることができず、些細な事にいちいち傷つき、悩み、つまづく……。

そんな彼女を、周囲で取り巻く他大学の女子たちはさまざまな思いを抱えながら見つめていた――それぞれが抱える葛藤、迷い、恋の行方は?

Amazonより引用)

 

 

本作は『早乙女カナコの場合は』というタイトルで映画化。主人公の早乙女香夏子は橋本愛さんが演じる。もう映画化が決まった後に読んだので、香夏子は橋本さんを想像しながら読んだけどぴっっったりだな!!!と思った。香夏子のしゃべりがすべて橋本さんのトーンで再生された。橋本さん、女優さんとして大好きです。

 

連作短編の魅力:視点が変われば見える景色だって変わる

立教大学日本女子大学学習院大学慶應義塾大学青山学院大学早稲田大学出身の6人の女の子の物語。大学によって女子の立ち居振る舞いや性格が違うというか、大学によってカテゴライズされているような描写がかなり多く出てくる。学生時代を思い出して、そういえばそんなこともあったかもと思いながら読んだ。

 

さて、この物語に出てくる女の子たちは香夏子を中心に総じてちょっと痛い。何が痛いって、自意識の塊で「自分だけは違う」と思い込んでいるところとか、元カレのことをどうしても忘れられなくて必死に、滑稽なまでに追いかけてしまうところとか、寂しくて一人でいられないところとか。痛々しすぎて、大学時代の自分を思い出しては本を閉じた。

 

香夏子は他大学とのインカレサークルに所属していて、その中では「早稲女」というカテゴリーで女として見られない。卒業する気もなさそうな長津田という結構どうしようもない男とダラダラつきあっている。お互いに好きなのに、何かがうまくいかない。しかも長津田日本女子大学の麻衣子と浮気まがいのことをしている。

 

連作短編の好きなところは、視点が変わることで考え方や見える景色が変わることだ。最初は麻衣子のことを「うざい女」と思って読んでいたが、麻衣子の視点になると誰よりも麻衣子のことがわかった。これまでの自分を変えたくて、無理して自分を作って、でもオンリーワンには選ばれない。これまでの友達を見下して、ちょっと派手な友達とつきあうことに優越感を感じている。好きな人には振り向いてもらえない。

 

あのときの私へ、がんばって生きてみるよ

私は日本女子大学出身だ。こう言っちゃなんだが、入りたくて入ったわけではない。第一志望は早稲田大学、最低でも青山学院大学に入りたかった(生意気すぎる言い方すみませんもう過去のことすぎるので許してください笑)。今はどうか知らないが、その当時は女子大の受験日は早かった。早々に日本女子大学に合格していたため、その後の試験はどうも身が入らず、すべて落ちた。浪人する気がゼロだったし、この偏差値だったらまあいいか〜という軽いノリで日本女子に決めた。

 

入学した後、ずっと共学だった私は、なんともいえない女子大の独特な雰囲気に一生馴染めなかった。何が嫌だってわけではないんだけど、何かが違ったし何かが息苦しくて、大学生活は結構暗黒時代だった。もちろん楽しい思い出もあるし、友達もいた。でも、大学時代の思い出は私の中で結構思い出したくないものだ。

 

大学の中で私は「私だけは違う」と思っていた。麻衣子と違って私はその中に馴染む気があまりなく、今思えば結構尖ったファッションをしていたと思う。自分だけは違うんだと思い込みたかった。東大とのインカレサークルには1ヵ月だけ所属した。そこで同い年の東大生に一目惚れをし、一週間たらずで告白し、見事玉砕。そしてその彼は私と一緒に入った日本女子大学の友達とつきあった。あれほどまでに惨めだったことはない。なぜなら彼女は、それこそ「女子大っぽい」女の子だったから。

 

この物語は連作短編でありつつ、香夏子のストーリーが主軸になっている。痛々しい香夏子の性格や行動を見ていると、自分の過去を思い出してざわざわすると同時に(香夏子は早稲田大学ですが)、香夏子のことが愛おしくてたまらなくなった。

 

そしてあのときの自分を、抱きしめたくなった。思い返せば痛いし、行動を振り返るだけでも恥ずかしいけど、当時は置かれた場所でなんとか自分を出して生きようと、私はこんなところで終わらない!と、本気で生きていたし、なんというかギラギラしていた。そんなもがいていた自分に恥じないように、「結局そんなとこで落ち着いてんの!?」と思われないように、2025年はもうちょっと必死に生きてみたいと思う。