本と映画と、少し寄り道

小説と映画の感想文をゆるゆると。

【読書感想・書評】『星屑』村山由佳 ステージの上で輝く星

私には推しがいる。思えば小学生の頃から誰かを推してきた。今の推しは4年前に好きになったアイドルで、今まで応援していた事務所ではなく、初めて好きになった他の事務所のアイドルだ。

 

彼だけではなくて、今まで好きになってきた人全員に思うことではあるんだけど、彼がステージで歌って踊っているとき、星みたいだと思う。アイドルはよく、ファンのペンライトの光を星に例えることが多い。しかし、私の中でステージに立ち続けるその姿こそが、星のようだと思う。まるで命を削りながらキラキラを振りまいているような、そんなふうに感じてしまうから、コンサートでの彼を見るたびに心が揺れて、震えて、涙が出てしまう。

 

村山由佳『星屑』あらすじ

 

 

この子たちをひときわ輝く〈スター〉にしてみせる――。博多で父親を知らずに育ったミチル。東京でお嬢様として我儘に育った真由。反りの合わない二人が、ペアを組んでスターダムを駆け上がる!

昭和の芸能界を舞台にした、ド・エンタメのスター誕生物語。東京の大手芸能プロダクション「鳳プロ」のマネージャーながらも、雑用仕事ばかりでくさっていた桐絵は、ある日、博多のライブハウスで歌う15歳の少女・ミチルに胸を射抜かれ、周囲の反対を押し切って東京につれてきた。

鳳プロでは、その年、専務の14歳の娘・真由を大型新人としてデビューさせることが決まっていたので、ミチルのデビューの目はないはずだった。しかし、二人はペアを組んでデビューすることになる。正反対の性格で、反りの合わない二人はまったくうまくいかない。しかも二人には出生の秘密もあって……。昭和の芸能界を舞台に、必死にもがく少女たちと、彼女たちをなんとかスターダムにのしあげようとする大人たちによる、ド・エンタメの、痛快スター誕生物語。

幻冬舎HPより引用

 

この本の語り部は、スターになっていくミチルでも真由でもなく、芸能事務所のマネージャー・桐絵だ。桐絵は、仕事で訪れた福岡のライブハウスで、ミチルを見つける。唯一無二の才能を忘れることができなくて、福岡まで自費でスカウトに行く。当のミチルはとても純粋で、歌うことがただただ大好きな女の子だ。

 

一方、真由は事務所の専務の娘で、才能はありながらも性格に難アリという感じで、ものすごく生意気だ。正直前半はずっと真由のわがままにイライラしていた。それは桐絵もだ。

 

ミチルと真由はじきに出会うことになるのだが、そんな正反対のふたりが仲良くやっていけるわけもない。しかし、さまざまな事件が起こる中で、正反対のふたりはお互いをライバルと認め、高め合っていく関係性になっていく。

 

桐絵が語り部ということで、大人はきっと桐絵に感情移入する。自分が見つけた星が、自分が大切に見守ってきた星が輝く瞬間を目の当たりにしたような気持ちになる。ラストにかけてのミチルと真由の成長には本当に心が震えてしまって「絶対にもう傷つくな」「傷つけた人は許さない」みたいな激重感情が自分の中に芽生えてしまった。

 

この物語では、ミチルと真由の周りでそっと2人を見守ってくれる事務所の先輩たちも忘れられない。厳しいことを言いつつもここぞというときに2人に喝を入れてくれる大先輩・城田万里子、ふたりが憧れる二人組の女性アイドル・ピンキーガールズ。中でもピンキーガールズの言葉が印象的だった。

 

「いいじゃないの、無理やり仲良くならなくても。たとえふだんは口もきかなくたって、べつに何も困りゃしないわ。結局のところあたしたちは、ステージの上でさえ笑っていればそれでいいんだから」。

 

そりゃあ仲良いに越したことはないんだけど、アイドル、特に女性アイドルを見ていると「本当は仲良くないんだろうなぁ」と感じてしまうことがある。それでもステージに立つと、顔を寄せ合ったりハートを作ったり、全力で笑顔のパフォーマンスを届けてくれる。それは彼女たちのプロ意識の賜物だし、実際裏でどうかなんて私たちには知ることができないのだから、それでいいのだ。魔法にかけられて素直にそれを受け取った方がお互い楽しいし幸せだ。

 

本作を一言で表現するのであれば、theエンタメ小説。正直あっと驚くような展開は少ないかもしれない。それでも、桐絵と一緒にミチルと真由の歩く道を見守っていくうちに、彼女たちのことが愛おしくてたまらなくなる

 

そして、ステージの上で輝く推しを見た時に、まるで星のようだと感じるのは、想像できないほどの努力と葛藤、わたしたちが見ることのできないものたちと彼らがいつも戦っているからなのか。

 

そんなことに、改めて気づくのだ。