やってまいりました月曜日!これで半分くらいかなぁ、と思います。始めたはいいけど結末に悩んでいます。笑
#5『握手の先』彼女
大学の授業前、スマホを見つめていると、友人に声をかけられた。「なんか悩んでんの?」という言葉に「え、なんで?」と返すと、「こんな顔してたよ」と友人は眉間に皺を寄せた。
少し笑ってなんでもないよと返して、課題のことに話を持っていき話題を変えた。
推しの所属しているグループのシングル発売が決まった。私が見ていたのはリリイベの案内だ。リリイベは、ミニライブがあってその後に特典会があるもの。今回の特典会も握手会だ。
正直私は悩んでいた。最初の握手会で、見つめられて声を聞いたとき、この前のインスタライブ、そしてこの前の渋谷。顔だけが好き、という感情に少しだけ違う色が入ってしまうような気がしてならない。行こうか行くまいか。でもそもそも顔が好きなので近くで顔を見たい。
暇な講義の間に散々悩んでいると、スマホが震えた。講義中にも関わらずスマホを確認すると、ファンクラブアプリの通知だった。すぐに開くと、推しから「リリイベ決まったね!絶対会いに来てね」というメッセージが届いていた。「絶対行く!」「早く会いたい」「楽しみすぎる」などの返信がすごいスピードで流れていく。
私はこういうものに返信はしない。しないけど。
どうしても行きたくなかったら行かなければいい。当日決めよう。
私はイベント参加券付きのシングルを購入した。
※
推しの顔が好きだ。
それはずっと一貫して変わっていない。
二度目の握手会の日が来てしまった。昨日は美容院に行った。プリンになってたから。ただそれだけ。それだけだ。
会場は、カラフルで溢れている。
メンバーにはメンバーカラーというものがあり、ファンは大体自分の推しのメンバーカラーのものを身につけている。私はというと、誰のメンバーカラーでもない黒を着ている。それはいつものことだ。あまり自分を主張したくないし、目立ちたくないし、誰のファンだと周りから思われたくもない。
私の推しは所謂「リアコ勢」が多い。インスタライブが少し燃えたのも、そこに原因がある気がする。故に、同担拒否や推し被りNGとしているファンも多いのだ。私は出来る限り自分の存在を消して、ミニライブを静かに見た。
こういうところで大声を出せる人のことを本当に尊敬する。普通に恥ずかしい。でもきっと演者からしたら声を出してくれた方がうれしいんだろうなぁ、とステージで踊る推しを見つめていた。ペンライトぐらいはちゃんと持っていて、ささやかながら彼のカラーのピンクにしている。私が主張できるのは、そんな小さなことだけだ。
今日も彼は顔がいい。何よりも、ステージで歌って踊っている顔がいい。彼の周りは、星が舞っているみたいだ。キラキラしすぎていて、つい零してしまった、そんなふうに小さな星が彼の周りに舞っているようだ。これは初めて彼のステージを見たときから思っていた。
ミニライブが終わって、握手会に並ぶ。ブースに入ると彼と目が合う。彼は、にこっと笑って「こんにちは」と言った。
その瞳に捕らえられたようになるけど、私はまた言う。
「顔が好きです」
だってそれ以外に伝えることがないから。
きっと今日も、また顔を見せてくれるだろう。こういう時にアイドル側にレパートリーなんて求めていない。もう求めない。
彼は「一番?一番顔が好き?」と質問してきた。そんな返しが来ると思っていなかったので、私はやや戸惑って「一番顔が好き」とオウム返しした。
彼は「正直だな~」と笑って、「嫌いじゃないよそういうの」と言った。
「お時間です」と肩を叩かれ、彼の手を離してブースを出ようとすると、後ろから少し大きめの声で「名前は?」と聞かれた。再び突然のことに驚いて、私は首を横に振った。名前なんて、名乗らない。覚えてほしいなんて、思わない。彼がどんな顔をしていたかは、わからない。
ブースを出て、会場の外に出ると、心臓が音を立てていた。自分の耳にしっかりと音が届くくらいに。おさまれ。そう思って胸に手を当てると、手が心臓の音に合わせて動いていた。なんで。なんでなんでなんで。
「名前は?」
どうして耳から離れないんだろう。顔を覚えてほしい、名前を覚えてほしい、そんな感情は、とっくに捨てたはずなのに。
次回は4月28日です!もう4月が終わる頃ですね。あっという間すぎる。
いつもスターありがとうございます。うれしいです!