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『君の顔では泣けない』芳根京子×髙橋海人で実写化 好きな小説が“映像”になるとき思うこと

名刺代わりの小説10選にも選んでいる君嶋彼方さんによる小説『君の顔では泣けない』が実写化する。この作品は私にとってちょっと特別で、単行本で購入した後、文庫になったときも購入した本だ。そのくらい、好きで心を掴まれた作品だった。“男女入れ替わりもの”と聞くと、「よくある話」と感じるかもしれないが、これは決して「よくある話」ではない。じくじくして、切なくて、形容しようがない痛みがずっと背後に漂っている作品だ。

 

『君の顔では泣けない』/君嶋彼方あらすじ

 

 

高校1年の坂平陸は、プールに一緒に落ちたことがきっかけで同級生の水村まなみと体が入れ替わってしまう。いつか元に戻ると信じ、入れ替わったことは二人だけの秘密にすると決めた陸だったが、“坂平陸”としてそつなく生きるまなみとは異なり、うまく“水村まなみ”になりきれず戸惑ううちに時が流れていく。もう元には戻れないのだろうか。男として生きることを諦め、新たな人生を歩み出すべきか――。迷いを抱えながら、陸は高校卒業と上京、結婚、出産と、水村まなみとして人生の転機を経験していくことになる。

Amazonより引用)

 

「よくある話」ではないのは、「元に戻ろう」とする気持ちと「この姿で生きていこう」という気持ちの対比、その姿のままで異性(中身にとっては同性)と恋愛するという複雑さ、中身は男性、外見は女性の姿で結婚・妊娠・出産までするという大胆さ。

 

その中でもちろん二人は苦悩していくし、悩んでいくが、そつなく器用に陸として生きていくまなみの姿がかっこよくて、でも切ない。男女の精神年齢の違いみたいなものも感じられて、入れ替わりなんて経験したことがないのにリアリティがある。

 

好きな作品が実写化するということ

 

好きな作品が実写化するということは、どんなときでも複雑な気持ちになる。読書のいいところは、「想像」ができるからだ。そのキャラクターの声、体温、顔、身長、文字から、雰囲気から、そして今まで経験してきた自分の人生から想像して、頭の中で形ができていく。

 

私たちは、その想像でそのキャラクターをより好きになったり、より嫌いになったりする。実写化するということは、誰かのその想像が具現化すること。きっと誰一人として同じ想像をしている人はいないので、大勢の読者の想像の代表みたいな感じになってしまう。

 

もちろん実写化は悪いことではない。大好きな実写化もたくさんあるし、実写化によって好きな作品が広がっていくことはうれしい。そして実写化したことでより解像度が上がって好きになる作品もある。この作品の実写化を聞いたとき、やはりすぐに「誰がやるんだろう」と気になった。そして先日、いよいよキャストが発表された。

 

陸役は芳根京子さん、まなみ役は髙橋海人さん。二人の映像作品はよく見ている方で、二人の演技をとても信頼している。正直ほっとした。入れ替わりものというだけでもきっと繊細な演技が求められるし、その上この物語は15年もの間入れ替わって生きている。つまり、まなみ役でも陸役で、陸役でもまなみ役ということ。どれほどまでに難しいのだろうと思う。

 

芳根京子さんは、自然で瑞々しい演技が魅力だと思う。かわいいもできるしかっこいいもできるという印象で、いつどんな作品でも安定した演技力を見せてくれるので、芳根さんがいると安心する。

 

髙橋海人さんは、なんといっても『だが、情熱はある』の演技が鮮烈だった。同作で髙橋さんはオードリーの若林正恭さん役を演じており、そのリアルさに度肝を抜かれた。繊細な演技や間の演技がとても上手だなと感じていた。きっと本人も繊細なところと強いところを持ち合わせているのだろうと思う。

 

キャストを見て見るか見ないか決めることが多いが、この実写化はぜひ見たいと思う。私の頭の中の想像を飛び越えて、二人がどんなまなみと陸を見せてくれるのか、今からとても楽しみだ。