本と映画と、少し寄り道

小説と映画の感想文をゆるゆると。

梅雨に読みたい意外な本3選|雨の日の気分を変える名作 

梅雨だとは思えないくらい関東は晴天が続いている。これからの梅雨は、しとしと雨が降るというよりも、大雨の日があれば快晴の日もある、というような梅雨になるという。夏が来る前に体が参ってしまいそうだけど、その中でも私たちには本がある。涼しい場所でする読書は文句なしに最高だし、雨の音を聞きながらする読書は物語と向き合う時間になる。ここでは梅雨におすすめの本を紹介する。

 

①ぼくは勉強ができない/山田詠美|正直に生きることの美しさ

 

 

ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ――。17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪い。この窮屈さはいったい何なんだ! 凛々しくてクールな秀美くんが時には悩みつつ活躍する高校生小説。

Amazonより引用)

 

 

なぜ梅雨?という感じではあるけれど、鬱々とした気分をふっ飛ばしてくれるのにぴったりの小説だと思っている。この物語と私の出会いは、何を隠そうセンター試験(大学入学共通テスト)だ。私は国語が好きで、国語の成績には自信があった。しかし高校生の時、センター試験の過去問で本作が扱われていて、おもしろいくらいに問題が解けなかった。そのときからこの『ぼくは勉強ができない』というタイトルはずっと覚えていて、大人になってから読んだ本。現代文の問題で、答えを見てもさっぱり納得ができなかったことを覚えている。

 

読み返してみると、センター試験云々は置いておいて、高校生のときの自分がこの話を理解することはできなかったんじゃないかと思う。そのときの私は、今よりももっと「他者」や「違う」こと、「多様性」を受け入れられなかった。当時の私には、秀美の生き方や価値観を理解するだけの器がなかったのだと思う。

 

大人になって読んでみると、正直に生きている秀美はとてもかっこいい。そして秀美が正直に生きられるのは、「絶対的味方」の存在がいるからだ。小説でありながら哲学書のようで、お守りとしても持っていたい1冊

 

きらきらひかる江國香織|透明な文章に包まれて

 

 

私たちは十日前に結婚した。しかし、私たちの結婚について説明するのは、おそろしくやっかいである――。笑子はアル中、睦月はホモで恋人あり。そんな二人はすべてを許しあって結婚した、はずだったのだが……。セックスレスの奇妙な夫婦関係から浮かび上る誠実、友情、そして恋愛とは? 傷つき傷つけられながらも、愛することを止められないすべての人に贈る、純度100%の恋愛小説。

Amazonより引用)

 

 

江國さんの小説の中でもダントツで好きな本。江國さんの描く文章は、透明だ。まるで水の中にいるような文章に包まれて、心が静かになる。私の中で、江國さんの本と水や雨はリンクする。

 

彼女の描く女性を見ていると、ちょっと無理してみたくなる。自由になりたくなる。行きもしないバーや、飲みもしないワインでベロベロに酔っ払ってみたいし、ひとりでレイトショーに行ってわんわん人目も気にせずに泣いてみたい。

 

彼女の物語に出てくる登場人物は、いつもどこか変わっていて、愛おしい。でも、「変わっている」って、誰から見た「変わってる」なんだろう。誰から見た「やっかい」な関係なのだろう。本作は、誰かを愛することの純粋さや、厄介さに溢れている本だ。人を愛することは、きれいじゃない。でもきっと、だからこそ美しく、愛おしい。

 

③ひらいて/綿矢りさ|青春の痛みを思い出す

 

 

華やかでモテる女子高生・愛が惹かれた相手は、哀しい眼をした地味男子。自分だけが彼の魅力に気づいているはずだったのに、手紙をやりとりする女の子がいたなんて。思い通りにならない恋にもがく愛は、予想外の行動に走る――。身勝手にあたりをなぎ倒し、傷つけ、そして傷ついて。芥川賞受賞作『蹴りたい背中』以来、著者が久しぶりに高校生の青春と恋愛を瑞々しく描いた傑作小説。

Amazonから引用)

 

 

綿矢節炸裂!という感じの物語。恋をするというエネルギッシュなパワーに溢れていて、非常にヒリヒリする作品。雨の中で読むのも、あえて快晴の日に読むのもいいんじゃないかなというオールマイティーな作品だと思う。

 

が、正直、登場人物には誰にも共感できなかった。それでも胸がざわざわした。3人はいつかの私なんじゃないか、と思う瞬間があった。未熟で、自分のことしか考えられなくて、自分の気持ちしか優先できなかったあの頃の自分。どこかで他人をバカにしていた自分。そういう自分はもしかしたら今もいるのかな。

 

誰かをこんなに熱く好きだと思うことは、もはや思い込みや意地だったりもする。そのときに感じる嫉妬や独占欲、ひん曲がった愛情。どんなに思い込みだとしても、それは絶対に忘れられない感情として自分の中に蓄積される。

 

もしかしたら「あのとき馬鹿みたいに好きだったなぁ」なんて振り返れるときが来るのかもしれないけど、でも、何かのタイミングであの火傷しそうな熱くて痛い思いを思い出すんだと思う。だって私がそうだから。いつまでも思い出す、ちょっとかっこ悪い恋は、あのとき必死だったから恥ずかしくて、なんだかかわいい。

ちなみに実写化もされていて、主演の山田杏奈さんとたとえ役の作間龍斗さんがほんっっっっっとに素晴らしいです。

 

ひらいて

ひらいて

  • 山田杏奈
Amazon

 

みなさんのおすすめの梅雨本もぜひ教えてください!