優れた脚本作家に贈られる向田邦子賞の第43回贈賞式が6月24日、東京都内で行われた。第43回の受賞者は兵藤るりさん。受賞作は清原果耶さん主演のドラマ『マイダイアリー』(2024年/テレビ朝日、ABCテレビ)だ。
本作は、社会人1年目の主人公が日常のささいな出来事から学生時代を振り返る構成で、共に過ごした男女5人の群像をノスタルジックに描いた完全オリジナルのヒューマンドラマ。清原さんのほか、佐野勇斗さん、吉川愛さん、見上愛さん、望月歩さんがメインキャストとして出演した。
私は本作を毎回日曜の夜、リアルタイムで見ていた。この作品は、何か大きなことが起こるわけでもなく、ドラマティックなことが起こるわけでもなく、“日常”を描いたものだ。もちろんつきあったり別れたり、トラウマと向き合ったり喧嘩したり、そういったことは毎回起こるが、派手な展開は起こらない。あくまでも大学時代の“日常”を描いている点が優しく、日曜の夜に見るのにぴったりの作品だった。
本人にとっては大きなことでも、人から見ると大したことない、ということはよくあることだ。社会人になって学生時代が遠のいてしまうと、作品の中の彼らを見ながら「こんな感じだったな」と何度も思った。なぜあのときあんなに涙が出たのだろう。なぜあんなにムキになって、なぜあんなにうれしかったんだろう。そういった記憶が、物語の中の彼らを通して脳内にずっと流れ込んできていた。このドラマが放送される日曜日、私はいつも過去にタイムスリップしたような感覚になっていた。
もちろん大人になっても悩みは尽きない。しかし、学生の頃のあのヒリヒリするような、触れたら壊れてしまうような感覚は、もう決して戻ってこない。このドラマの魅力は、内容の前にまず「言葉」だと思っていた。中には「こんな言葉を使う人いるのかなぁ」と思うせりふもあったが、きっといるのだ。私が出会っていないだけで、きっといる。
例えば、最終回での優希(清原さん)の言葉。「優しさって交換するものじゃなくて循環するものって思えたらいいよね。水みたいに。意識しなくてもそばにあるのもっていうかさ。たまに雨も降らせるけど」。そしてそれに返す広海(佐野さん)の「大丈夫だよ。こうやって二人でひとつの傘持ってれば人生に雨が降ってるときもちゃんと前に進める。距離は離れても、僕は優希のこと、ひとりにさせない」という言葉。
文学的で美しくて、優しい。そしてその言葉は、文字だけではなくて人が口に出すことでその人の雰囲気や声、トーンと混ざり合ってもっと優しいものになる。私は特に清原さんと佐野さんのお芝居がとても魅力的だと感じた。声の出し方や目線の動かし方、二人の間に流れている柔らかい空気。きらきらしているのに少し切ない、というある種の矛盾までもが優希と広海の雰囲気を作り出していた。
受賞スピーチで、兵藤さんは「自分と作品とのつながり」の話をしていた。ただ一つ自分に返ってくるものだと。そして彼女は、どんな作品でも「これが最後かもしれない」と思って書いているのだという。彼女の言葉が優しくて、それでも力強く人の背中を押すのは、彼女が魂を込めて作品と向き合っているからだ。
『マイダイアリー』の中で生きている彼らは、いつも優しくて温かい。予期せず人を傷つけてしまうことはあっても、核にはきちんと人を思う心がある。優しさはやっぱり強さなのだと、信じたくなる作品だった。
出典:PR TIMES
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