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『書店に寄ったら1冊本を買う』キャンペーン、始めましたー『100分間で楽しむ名作小説』との偶然の出会い

芥川賞直木賞の『該当作なし』の発表を受けて、「書店に寄ったら1冊本を買う」キャンペーンを勝手に実施している。少しでも書店を盛り上げたい、という気持ちで勝手に始めたこのキャンペーン。仕事で訪れた街で書店を探し、その書店で平積みになっている本をチェックするのは純粋にとても楽しい。書店には“色”があって、どの書店もラインナップが違うからだ。昨日、ふらっと訪れた書店で、私は懐かしい出会いをした。

 

『100分間で楽しむ名作小説』との出会い

 

 

私が出会ったのは、角川が出している「100分間で楽しむ名作小説」というシリーズ。活字を従来の本文組より大きくして、行間をゆったりとって読みやすくしたシリーズだ。「100分間で楽しむ」というコンセプト通り、とても薄い作りになっている。そして何よりも装丁が美しく、全部集めてみたくなる。

 

文字が大きく行間もゆったり

ラインナップは芥川龍之介の「蜘蛛の糸」、太宰治の「走れメロス」などの古典名作から、森絵都の「宇宙のみなしご」などの現代の名作までさまざま。まだ数は少ないが、2024年3月、11月、2025年6月に発売されており、これからもどんどん増えていきそうだ。

 

さて、そこで私が出会ったのは山本文緒の「みんないってしまう」。私は山本文緒さんの物語が大好きでほとんど読んでいるが、高校生の頃から読んでいるため、すべてが手元にあるわけではない。月日が流れて手放してしまったものもある。「みんないってしまう」は手放した本のひとつだった。私が書店に寄ったタイミングは、その日の仕事が終わって帰るタイミングだった。家までは1時間弱。「100分間で楽しむ」とあるが、おそらく読み切れるだろう、と踏んで、わくわくしながらレジへと急いだ。

 

「カバーはおかけしますか?」という質問に、少し悩んでから「いいえ、結構です」と答える。いつもは自前のブックカバーをしているのだが、かわいらしい装丁なのでそのまま読みたいと思った。そして山本文緒さんは私の永遠の推しなので、周りの人に「おもしろいんですよ!!」と無言のアピールをしたい気持ちにもなったのだ。

 

素敵な装丁と久しぶりの出会い。店員さんから本を受け取った瞬間に、心がワクワクした。この感覚は、小学生のときに発売日を心待ちにしていた漫画や、ずっと欲しかった本を買ってもらったときに似ている。そんな新鮮な興奮を、初めて足を運んだ書店で味わえることがうれしかった。

 

帰り道の電車で本を開く。あの頃のように、夢中で読む。山本さんのお話は、少しダークなものや喪失感があるものが多いという印象なのだが、「みんないってしまう」は違った。短編集なのでそのようなジャンルのものもあったが、全体的に前向きで、読後感がさわやかだった。ダークサイドの印象が強かった私は「そうだ、そうだった」と山本さんの描く物語の光の部分を思い出す。人との関係や物事は、どんどん流れていく。その流れの中でまた新たな人に出会い、新たな物事が始まる。そんなことを押し付けがましくなく伝えてくれる物語たちだった。

 

結局、電車での時間では読みきれず、最寄り駅に着き、誰もいない駅の待合室に座って最後まで読んだ。時間にすると本当に大体100分だった。物語に興味はあるけど読み切る自信がない人や、読書と離れていたけれど久しぶりに読みたい人、集中力があまり長くは続かない人におすすめできるシリーズだ。100分という時間を長いととるか短いととるかはその人次第。人生のうちの100分を物語と一緒に過ごしてみると、過去の自分と向き合えたり、新たな自分に出会えたりすることがある。少なくとも私は、この帰り道の100分で「明日の仕事もがんばろう」と思えたし、この本を最初に読んだときの自分は何を思ったのだろうと、過去の自分に会いに行った。

 

書店での出会いは、これだからおもしろい。購入しようとまったく思っていなかった本でも、その書店だから見つけられた、という出会いがある。これからも「書店に寄ったら1冊本を買う」キャンペーンをしばらく続けていきたいと思う。新たな出会いにワクワクしながら。

 

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