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夏の終わりに読みたい!おすすめ小説3選 【さわやかからぞわっとまで厳選】

ここ数年、夏になると読書が捗る。「夏」の連想ゲームをするならば「読書」はおそらく下位だろうが、私の中では上位に食い込んでくる。8月も終盤に入ったが、まだまだ夏が終わる気配はない。海やプールという定番のアウトドアももちろん楽しいが、この暑すぎる夏の終盤は、涼しい部屋でまったり読書することもおすすめしたい。

 

深夜ラジオが色を失った世界に灯りを戻す『明るい夜に出かけて』/佐藤多佳子

 

 

夏になると私が呪文のようにいろんな人に「読んで読んで読んで…!!」と激推ししている作品。主人公はあることがきっかけで心を閉ざし、大学を休学している富山。実家を離れて神奈川県で一人暮らしをし、コンビニの深夜バイトに勤しんでいる。そんな富山の心の癒しは深夜ラジオだ。“好きなもの”を通して富山はゆっくりと人と交流するようになっていく。次第に色を失った世界が蘇っていく。

 

一言で言ってしまえば「富山の成長物語」でもあるのだが、何よりも「好きなもの」を通じて人が繋がっていく姿が鮮やかで、優しい。背中を押す物語というよりも、心もとないときにそっと隣にいてくれるような物語。ゆったりしたい気分のときや、ちょっと人生疲れたな…と思っている人に強くおすすめしたい。

 

大人も子どもも眩しい青春物語『島はぼくらと』/辻村深月

 

 

主人公は瀬戸内海に浮かぶ島・冴島で暮らす高校生四人。彼らは高校卒業と同時に、余程の事情がない限り島を出る。ある日、四人は『幻の脚本』を求めて島にやってきた青年に声をかけられる。毎日の暮らしの中で起こる予想もしない出来事…大人も子どもも眩しく、キラキラした青春の物語。the辻村深月さんの青春小説!という感じで読後感が最高にさわやかだ。海の匂いや景色が目の前に浮かぶように鮮やかで、部屋にいながら自然を感じることができる。

 

ある時期特有の、不安定で揺れ動く気持ちだけではなく、大人だからこそのもどかしさも描いている作品。辻村さんの作品はいつの時期に読んでも心がきゅっと切なくなる。青春を味わいたい人にぴったりの物語。

 

汗のようにまとわりつく違和感の正体は?『向日葵の咲かない夏』/道尾秀介

 

 

主人公の「僕」は、夏休みを迎える終業式の日、欠席したS君の家を訪れる。そこで「僕」が見たのは、S君の死体だった。「僕」は、Sくんの無念を晴らすために妹のミカと事件の謎を追い始める。終始べっとりとまとわりつく違和感が癖になる作品。「これはどういうこと…?」「なんか変…」と思いながら読み進める先にまた違った世界がある。単なるミステリーではなく心を抉ってくる作品で、読み切るのに少し精神力が必要かもしれない。

 

ただ、この物語の本題は謎やトリックではないと思う。人間の弱さや言葉の与える力、そんなことがヒリヒリと伝わってくる。正直、合う合わないはある本だと思う。でもとにかく一度読んでみてほしい。止まらない読書体験をしたい人に強く推したい。

 

みなさんも“夏の推し本”、ありますか?もしあればコメントでぜひ教えてください。読書の秋に備えて“秋の推し本”のコメントも大歓迎です!