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推し活のリアルを描くおすすめ5冊|キラキラだけじゃない「推す」ことの物語

自分に大切な推しがいるからか、「アイドル」を題材にした話にとても弱い。2025年、世間は空前の推し活ブームだ。過去には「キモい」と揶揄されていた「オタク」は変化を遂げ、いつの間にか「推し活」がキラキラとしたムーブになっている。しかし、その状況に少なからず居心地の悪さを感じている人もいるのではないだろうか。まさしく私がそうだ。

 

「推す」とは、そんなにキラキラしたものではない。

 

文字にすると本末転倒、という感じだが、推しに会うために自分にかけるお金を削って、4,000円のファンデーションを買うことも悩み、疲労困憊でも仕事をガンガン入れる。

 

その最中に何度も「もうやめようかな…」と思うターンが来る。しかし、推しに会えばすべてが吹っ飛ぶ。生産性があるようでまったくない。でも仕方ない。好きなんだから。そんな綱渡りの状態をもう何年続けてきただろう。虚しさとうれしさを繰り返しながら生きている私たちと、ただただ楽しい活動を「推し活」という言葉でまとめられるのは何かが違う。

 

今回の記事ではそんなモヤモヤを抱えながらもおすすめしたい「アイドル」をテーマにした5冊を紹介する。推すことは楽しいだけじゃない。そんなヒリヒリした痛みと、少しの救いが描かれている本たちだ。

 

◆『愛じゃないならこれは何』/斜線堂有紀

 

 

恋愛をテーマにした6篇の短編集で、その中の『ミニカーだって一生推してろ』は28歳の地下アイドルが主役の物語。地下アイドルの赤羽瑠璃は、いつからかある一人のファンのアカウントをチェックするようになる。ファンは純粋に瑠璃のことを推し、瑠璃はそんなファンの好意を受け取って励みにしていた。アイドルとファンは、あまりにも際どい線引きの中で生きている。どちらかが壊れればその関係性は終わってしまう。そんなことを突きつけられた物語だった。

 

もちろん他の話も切り口が斬新でおもしろい。痛くて苦しいのにもっと読みたい、片思いのような読書体験ができる本。

 

◆『アイドルだった君へ』/小林早代子

 

 

すべてに「アイドル」が関連している5篇の短編集。その中でも『寄る辺なくはない私たちの日常にアイドルがあるということ』は、まさしくアイドルを推しているファン目線の話で共感が持てる。最初に書いたように、アイドルを推す、と一言で言っても、そのスタンスはひとりひとり違うものだ。その核の部分というか、オタク同士の精神論のようなものが描かれている話で、本気でアイドルを推したことがある人は胸が潰されるような気持ちになると思う。

 

アイドルとファンの関係性や儚さを実感して、心がしくしくするような物語。それでも読むのがやめられないのは、この物語の主人公たちの思いにやっぱり共感してしまうからだ。

 

◆『スターゲイザー』/佐原ひかり

 

 

打って変わってアイドル目線のさわやかな青春物語!自分はアイドルではないのにものすごく“リアル”を感じてしまい、今の推しどころか今までの推しすべての顔が頭に浮かんだ。おそらく、がんばっていない人はいないし、悩んでいない人はいない。推しと出会えたことがどれだけの奇跡なんだと考え、今まで以上に推しを大切にしたいと思う物語だ。この物語はどちらかというと“陽”の感情が生まれる。デビューを目指す登場人物たちが生き生きとしていて、彼らが歌って踊るステージを実際に見てみたいとまで思う。続編を強く希望してしまう物語。

 

番外編

 

◆『コンビニエンス・ラブ』/吉川トリコ

 

 

あらすじでさえネタバレになりそうで何も書けないので番外編として紹介。とにかく楽しい恋愛小説。最後に「おぉ…」と声が漏れてしまう展開が待っていて、違和感を持ち続けながら読む読書体験がものすごくおもしろかった。かなり薄い本で一気に読めるので、なんとなく息抜きしたいときに読むのがおすすめ。“恋愛消費小説”というキャッチフレーズがついていて、まさしくぴったり。

 

◆『ファンになる。きみへの愛にリボンをつける。』/最果タヒ

 

 

最果タヒさんが、自身の推しへの気持ちをつづったエッセイ。ものすごく素敵で長い、人が書いたラブレターを読んでいるような気持ちになるエッセイで、誰かを深く好きになった人には必ず響く。読んでいると共感しすぎてヒリヒリしてしまい、かなりゆっくりと読んだ。装丁も素敵で内容も素晴らしかったので、本棚の目立つ場所に飾っているほどお気に入りのエッセイ。キラキラした部分だけではなく、推す上の葛藤も素直につづっていて、「わかる…」とうなりながら読んだ。



『アイドル』テーマの小説は今や数多くあるが、その本を読むたびに思うことがある。『アイドル』は、もちろん現実を生きているが、存在そのものがまるで物語のようだ。『ファン』はその物語の登場人物のひとりで、その物語には膨大な登場人物がいて思いがある。だからこそ私は、彼らの物語に期待してしまうし、どんなにモブキャラでもその物語の登場人物でい続けたくなってしまうのだ。

 

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