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柚木麻子『BUTTER』感想|体型変化で変わる「周囲の目」とルッキズムの正体

忘れられない一言がある。それは、高校時代の友人に10年ぶりに会った時に言われた一言。「もしかしておめでた?」。その頃、私は太っていた。高校時代から比べると15kgほど太っていた。「ううん」と答えた後の、友人の「え、ごめん」という気まずそうな顔が、私は今でも忘れられない。

 

ルッキズムが書かれている物語を読むと、いつもそのときのことを思い出してしまう。苦い思い出ではあるけれど、それでも私がこうやって振り返れるのは、ダイエットに成功して10kgほど痩せたからだと思う。それにもパラドックスを感じて、若干気まずくなる。誰でもない、自分自身に。

■『BUTTER』/柚木麻子が切り込むルッキズム

柚木麻子さんの『BUTTER』は、週刊誌記者の里佳が、梶井真奈子の面会を取り付けるところから話が発展していく。梶井は、男たちの財産を奪い殺害した容疑で逮捕された。この作品は、前半と後半でまるで見える景色が違うように感じる。前半は里佳が梶井の影響を多大に受けているため、どこかぼんやりとした印象だ。特に特徴がない味のような。しかし後半は、里佳は自分の周りにいる人たちとの関わり合いが濃くなり、里佳は自分の味を見つけていく。

 

本作は、里佳が梶井の過去に迫るという筋書きがあるが、その一方で「女性らしさ」や「ルッキズム」という問題にも切り込んでいる。

 

里佳はもともと細身で、スタイルが良い女性だ。女子校に通っていた頃は、その風貌から王子様のように憧れられていた。一方で梶井は若くも美しくもない容姿で、太っていた。そのことを世間から揶揄されてもいた。どうやらそれは幼少期の頃からのことだったようだ。

 

そんな里佳は、梶井と接触するに連れて、中身も外見も変貌していく。梶井は自分の欲望に忠実に生きている女性で、好きなものを食べて生活していた。最初に梶井が里佳に教えたのは、バター醤油ごはん。

 

今まで体型のことを気にしてあまり食事に頓着してこなかった里佳は、バター醤油ごはんを食べた時から、だんだんと梶井の勧める食事の虜になっていった。そんな食生活を続けていくうちに、里佳は太った。その瞬間に、周りの目が変わったのだ。この頃の里佳に対する周囲の反応を読んでいて、私は過去の自分のことを思い出した。

 

私ももともと細身で、大学時代はよく「細くて羨ましい」と言われていた。服を買いに行っても「スタイルいいですね」と言われていたし、体型に悩んだことは正直なかったし、自信もあった。

 

しかし社会人になって、ストレスなのか食生活の乱れなのかはわからなかったがどんどん太ってしまい、学生時代から15kg太った。その頃の周りからの目は、忘れられない。とにかく「舐められている」と感じることが多かった。周囲は、特に男性は平気で容姿いじりをしてきたし、女性からも「どうしちゃったの?」「何があったの?」と言われた。言われるたびに「太っちゃってさ〜」と笑っていたけれど、だからなんなんだという世間に対する違和感は、どんどん膨れ上がっていった。世間は、あまりにも自分以外のことに興味がありすぎる。

 

その違和感の一方で、私はダイエットをして、10kgほど痩せた。今も別に細いわけではないが、非常に生きやすくなった。圧倒的に舐められる機会が減ったと感じるし、正直自信も戻っていた。太っているときは、とにかく人の目が怖かった。今はその頃よりも息がしやすい、と感じる。

 

本作は今から9年ほど前に書かれた作品なのに、世間の価値観は現在もほぼ変わっていなくて、読んだ後になんだか脱力してしまった。そう言いながらも、私は再びダイエットをしている。なんとか学生時代の体重に戻したいと思っている。その私の行動こそが、なんだか皮肉にも思えて、誰よりも私自身がその価値観に捕われていることを嫌でも実感してしまった。

 

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