ちゃんと2週間連続で創作を投稿できている事実にちょっと感動している。小学生の頃から、小説書きたい!お話書きたい!という思いはずっと持っていたのに、いつも尻つぼみで絶対に完結できなかった。今回は公開している手前、絶対に完結させたい。読者のみなさまも通りすがりのみなさまもぜひよろしくお願いします(何を)。
#1はこちらから!
#2『スクロールの先』彼女
握手会の日から2ヶ月。相変わらず私は推しの顔が好きだ。でも、あの握手会の6秒から、少し中身を知りたいと思ってしまった。
人の中身なんて曖昧なものだ。理想と少しでも違えば、失望してしまう。私はそんな自分になりたくないし、戻りたくない。
ふと、以前の推しのことを思い出す。ふわふわのパーマの髪、犬のような愛嬌。彼のことは、顔はタイプではなかったけれど中身が好きだった。今思えば、“中身”って何なんだろう。握手会に通って、仲良くなって、名前を覚えてもらって。彼が呼んでくれる、自分の名前が好きだった。気づいてくれたときの「ん!」って表情が好きだった。
「ずっとそばにいてね」
そう言った彼は、ある日突然芸能界から消えた。聞いてないよ、そっちがいなくなるなんて。
今の推しには期待したくない。顔だけを好きでいたい。それだけで十分だ。
TikTokを惰性でスクロールしていると、今の推しのインスタライブの切り抜きが流れてきた。
「人生何があるかなんてわかんないよ。結婚もするかもしれないし、一生この仕事続けてるかもわかんない」
耳を疑って、思わず見続けてしまう。君はアイドルでしょ?そんなこと言うの?
コメント欄には「やだ」「一生アイドルでいて」「結婚したら病む」などの文字が並ぶ。
そりゃそうだ。アイドルには夢を見ていたい。
「気持ちはわかるよ、わかるけど。でも先のことはなんもわかんないじゃん?」
あくまでさらっと、普通のことのように言う。
「でも、俺がアイドルでいる限りは、絶対みんなのこと幸せにする。これは絶対ほんと」
画面越しに目が合った気がした。握手会と同じ、透明で真っ直ぐな瞳。
アイドルなんて砂糖菓子のようなものではないのか。ほろ苦さなんて、誰も求めてない。
前の推しの言葉が、ちらつく。私の心を甘く溶かしてくれた言葉たち。
「世界で一番大好きだよ」
「この仕事は天職だと思う」
「ずっと一緒にいようね」
「一生アイドル!」
閉じ込めていた記憶の箱が開いてしまいそうで、私は慌ててスクロールを繰り返した。彼の動画が流れてこなくなるまで、ただひたすらに。おすすめの小説紹介の動画が出てきたときにはひどくほっとした。
『スクロールの先』彼
眠る前にエゴサするのが日課だ。マネージャーには「ほどほどに」と言われる。ファンのリアルな声を拾えるから続けている。
時には目を背けたくなるような批判も目にする。わざわざハッシュタグで俺の名前までつけてさぁ。でも、届けたいからつけるんだよな。それは理解している。
今日のインスタライブは、正直ちょっと燃えた。結婚の話と将来の話をしたからだ。
「アイドルとしての意識が欠けてる」
「グループのエースなのに夢見せないでどうすんだ」
「え?アイドルは足掛けですか?」
批判の言葉が画面を埋め尽くす。
アイドルは、ファンに夢を見せる存在だ。うちのメンバーにも「一生アイドルでいる」とか「恋人はみんなだよ」と発言する奴がいる。それは否定しないし、間違いじゃない。
でも俺は、なるべく正直に生きていたい。昔から、果たせない約束をすることが嫌いだ。
グループ結成から三年目の春、一番人気だったメンバーが突然脱退したときのことを思い出す。ライブの最後のあいさつで「自分の夢を追いたい」と言った彼の声が、今でも耳に残っている。
彼の最後のライブ。真っ赤な目をして、パンパンに腫らした目をして、それでもペンライトを振ってくれたファンの姿を、俺はたぶん一生忘れない。あの光景を見て誓った。俺は絶対に、できない約束はしない。
今の仕事は好きだ、メンバーも好きだ。でも、「永遠」という言葉には重みがある。
そうは言っても昨日は正直になりすぎたか?
Xでエゴサをする指が止まらない。無遠慮に俺に向けられた言葉は、握手会に何度も来てくれたファンからのものもあった。知ってるファンだと余計に「人」感が強くて、結構くる。「降りる」まで言ってるもん。
やべぇかも、と思った矢先、目に飛び込んできたポストがあった。
「切り抜きでインライ見た。どうせ裏切られるなら、あのくらい正直に言ってくれた方が誠実なのかも」
思わずアイコンとプロフィールまでチェックした。知らない子だった。他の投稿はほとんどなく、リポストばかり。でも、なぜかこの言葉だけが心に沁みた。
正直に生きることは、時に人を傷つける。でも、それでも俺は。
次回のお話の更新は4月7日の予定です。最後まで書ききれることを願っていてください(笑)。次はブックカフェ特集ブログを公開します!
いつもスターありがとうございます、うれしいです!